日本一 Japan The Best London

ホーム  /  記事  /  英国消費者の反応

英国の消費者が日本製品につまずく八つのポイント

欧州で日本製品が伸び悩むとき、原因が品質だったことはほとんどありません。品質はむしろ期待を上回ります。問題が起きるのは、その品質が買う前の消費者に一切伝わっていないという一点です。以下は、英国の生活者を対象とした調査で繰り返し確認される八つの論点です。いずれも渡航せずに、進出前に潰せます。

一.情報の優先順位が逆になっている

日本のパッケージは、正面に商品名と情感的なコピー、側面に成分と使用方法、という構成が一般的です。英国の消費者は正面で「これは何で、私に何をしてくれるのか」を三秒で判断しようとします。「素肌への贈りもの」と書かれていても、それが洗顔料なのか化粧水なのかがわからなければ棚に戻されます。

実務的な対処は単純です。正面に、カテゴリー名(cleanser / moisturiser / seasoning)と主要ベネフィットを一行で。装飾的なコピーはその下に置く。日本語版のレイアウトをそのまま英訳するのが最も危険です。

二.価格の「理由」が書かれていない

日本の商品が英国の棚で競合の1.5〜2倍の価格になることは珍しくありません。輸送費、関税、少量輸入、為替。すべて合理的な理由ですが、消費者はその内訳を知りません。知っているのは、似たものが半額で隣にあるということだけです。

高い価格そのものは問題になりません。高い理由が読み取れないことが問題になります。産地、製法、原料の希少性、職人の関与、認証——いずれか一つでもパッケージ正面に短く置かれていれば、価格は「高い」から「高級」に変わります。この差は調査で明確に出ます。

三.使用方法が「わかっている前提」で書かれている

日本茶に「熱湯を避け、70〜80度で」と書いていないために、英国の消費者が沸騰したお湯で淹れて「渋くて飲めない」と判断する。これは実際に何度も観察される事象です。日本国内では説明不要の前提が、英国では存在しません。

同様に、洗顔前に使うクレンジングオイル、湯量の目安が書かれていないインスタント食品、水で戻す時間の記載がない乾物。一回目の使用で失敗すると、二回目は買われません。パッケージ正面での温度・分量・順序の明示は、どんなブランドストーリーよりも再購入率に効きます。

四.「誰向けの商品か」が読み取れない

英国の小売は、ターゲットの明示に日本よりはるかに直接的です。年齢、性別、悩み、使用場面。「乾燥肌の40代以上向け」と書かれていることを、英国の消費者は排除ではなく親切と受け取ります。

日本のパッケージは万人向けに見えるよう設計されがちですが、英国の棚では「誰向けでもない商品」として処理されます。ターゲットを狭めることへの抵抗は、この市場ではコストのほうが大きくなります。

五.甘さ・塩分・香りの水準がずれている

これは唯一、商品そのものの調整が必要になる論点です。日本の菓子は英国比でおよそ三割甘さが低く、日本のスナックは塩分が低く香料が強い。日本の化粧品は香りが控えめです。

面白いのは、これが必ずしも欠点として出ないことです。「洗練されている」と評価する層と「物足りない」と評価する層に、はっきり割れます。年齢層と価格帯によって、どちらの反応が優勢かが変わる——だからこそどの層に売るかを決める前に確かめる価値があります。処方を変えるべきか、ターゲットを変えるべきか、判断材料は事前に取れます。

六.内容量の単位が比較できない

英国の消費者は棚の前で単価を比較します。多くの小売は「per 100g」「per 100ml」の単価表示を併記しています。日本製品が独自の容量(たとえば「一袋 18g × 6」)で表示されていると、その比較の輪から外れます。

個包装は日本では品質と衛生の証ですが、英国では過剰包装と読まれるリスクがあります。同じ包装が「丁寧」に見えるか「環境に悪い」に見えるかは、単価が明示されているかどうかでかなり変わります。

七.規制対応の遅れが「怪しさ」に見える

成分表示の書式、アレルゲン表示、化粧品の CPNP 登録、食品の原産国表示。これらは法令遵守の問題であると同時に、信頼のシグナルでもあります。英国の消費者は、見慣れた書式の表示がないだけで「正規輸入品なのか」を疑います。

とくに越境ECで直送している場合、英語の成分表示がラベルに貼られていないだけで返品率が上がります。規制対応は「面倒な後工程」ではなく、そのまま購買率に跳ね返る項目として設計段階から見ておく価値があります。

八.ブランドストーリーが長すぎる

創業年、職人の系譜、産地の風土。日本のブランドが最も力を入れる部分ですが、英国の消費者はパッケージ上ではほとんど読みません。読まれるのはウェブサイトに来てからで、しかもすでに買う気になったあとです。

順序が逆になっているのが問題です。棚では「これは何か、なぜ高いか、どう使うか」の三点だけを伝え、物語はウェブに置く。ストーリーが不要なのではなく、ストーリーが効く場所が違うということです。

確かめてから進む

上記はいずれも、商品を英国に送っていただければ渡航なしで検証できます。コンセプト・パッケージ評価であれば画像データだけで、製造前の段階で実施可能です。まだ直せる時期に問題が見つかるという点で、最も費用対効果の高い調査です。

サービスの詳細を見る →  ·  相談する

逆に、英国で強い日本製品の共通点

うまくいっている日本製品には、意外なほど共通点があります。

  • 用途が一目でわかる。 包丁、文具、日焼け止め。何をするものか説明が要らない。
  • 「日本製」が機能の保証として働くカテゴリーにいる。 精密さ、耐久性、肌への穏やかさ。逆に、味覚や流行が絡むカテゴリーでは「日本製」は保証になりません。
  • 最初の一回で成功体験がある。 使い方を間違えようがない、あるいは間違え方が書いてある。
  • 価格帯が中位から上位。 最安値帯での価格競争に日本製品が勝てることはまずありません。品質が伝わる価格帯に置いたほうが売れます。

この四点に当てはまらない商品でも、パッケージと説明の設計次第で当てはまるようにできる場合がほとんどです。それを進出前に確かめられるかどうかが、実質的な分かれ目になります。

よくある質問

この記事に関して実際によくいただく質問です。

日本製品が欧米で売れない原因は品質ですか?

ほとんどの場合、品質ではありません。品質はむしろ期待を上回ります。問題は、その品質が買う前の消費者に伝わっていないことです。パッケージの情報の優先順位、価格の理由の不記載、使用方法の説明不足、ターゲットの不明瞭さ。いずれも渡航せずに進出前に検証し、修正できる論点です。

英国のパッケージには何を書くべきですか?

正面に、カテゴリー名と主要ベネフィットを一行で置いてください。英国の消費者は正面で「これは何で、私に何をしてくれるのか」を三秒で判断します。情感的なコピーはその下に置き、日本語版のレイアウトをそのまま英訳することは避けてください。

日本製品の価格が高いことは問題になりますか?

価格が高いこと自体は問題になりません。高い理由が読み取れないことが問題になります。産地、製法、原料の希少性、職人の関与、認証のいずれか一つでもパッケージ正面に短く提示されていれば、価格の受け取られ方が「高い」から「高級」へと変わります。

使用方法の説明はどこまで必要ですか?

日本国内では説明不要とされる前提こそ明記が必要です。日本茶の適温、クレンジングオイルを使う順序、乾物の戻し時間など。一回目の使用で失敗すると二回目は購入されないため、温度・分量・順序をパッケージ正面に明示することが、どんなブランドストーリーよりも再購入率に効きます。

英国で強い日本製品には共通点がありますか?

四点あります。用途が一目でわかること、日本製が機能の保証として働くカテゴリーにいること、最初の一回で成功体験があること、そして価格帯が中位から上位であること。最安値帯での価格競争に日本製品が勝てることはまずありません。