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越境ECの始め方 — 出店先より先に決めるべき五つのこと

越境ECの解説記事の多くは「Shopifyか、Amazonか、楽天か」というプラットフォーム比較から始まります。しかし実際につまずくのはそこではありません。出店先は後から変えられますが、対象国の選定、送料の設計、規制対応を間違えると、売れないか、売れても利益が残らないかのどちらかになります。順序を整理します。

一.国を決める(「海外」は国ではありません)

最初の分岐がここです。「海外向けに販売する」という粒度では何も設計できません。国によって、規制も、決済手段も、送料も、購買習慣も違います。

選定の判断材料は三つです。

  • 既に問い合わせが来ているか。 意外に軽視されますが、最も確実な指標です。既存サイトのアクセス解析で海外からの流入国を確認してください
  • 規制のハードルが低いか。 食品と化粧品は国によって難易度が桁違いです(後述)
  • 送料が成立するか。 単価が低く重い商品は、そもそも越境ECに向きません

まず一か国に絞ることを強くおすすめします。複数国を同時に始めると、規制対応と物流の検証が並行して走り、問題が起きたときに原因が切り分けられなくなります。

二.送料と関税の設計(利益が消える場所)

越境ECで利益が消える最大の要因は送料です。設計の選択肢は二つあります。

DDU(関税を購入者が負担)は事業者側の手続きが簡単ですが、購入者が受け取り時に想定外の請求を受けます。ここでの受け取り拒否率は高く、返送費用も発生します。DDP(関税込みで販売)は事業者側の負担が増えますが、購入体験は圧倒的に良くなります。

欧米の消費者は「合計金額が最後まで分からない」ことを強く嫌います。カート離脱の最大要因は、多くの調査で送料の不透明さです。可能ならDDPを、難しければ少なくとも決済前に総額を明示してください。

また、EUには一定額以下の輸入に対するIOSS制度、英国には低額輸入品の付加価値税の取り扱いがあります。制度は改定されるため、必ず最新の公式情報を確認してください。

三.規制対応(ここが最も見落とされます)

カテゴリー別に難易度がまったく違います。

  • 雑貨・文具・アパレル — 比較的容易。まずここから始める企業様が多い
  • 食品 — 成分表示、アレルゲン表示、原産国表示が現地書式で必要。国により事前届出も
  • 化粧品 — 難易度が最も高い区分。EUではCPNP登録と責任者(Responsible Person)の指定、英国では別途SCPNの登録が必要です。個人輸入代行と事業者としての販売はまったく別の規制が適用されます

化粧品と食品を扱う場合、規制対応の費用と期間を事前に見積もってから商品ページを作ってください。順序が逆になると、作ったページが使えないという事態になります。

四.決済手段(クレジットカードだけでは足りません)

国ごとに主流の決済手段が違います。欧州ではPayPal、iDEAL(オランダ)、Klarna(北欧・独)などが重要です。日本国内向けECの決済構成をそのまま持ち込むと、購入直前で離脱されます。対象国の主要決済に対応しているかは、プラットフォーム選定の実質的な判断基準になります。

五.英語ページは「翻訳」ではなく「検証」が必要

日本語の商品説明を正確に英訳しても、売れるとは限りません。文法的に完璧な英文が、まったく響かないことは珍しくありません。逆に、日本語では説明過多に見える表現が英語圏では必要な場合もあります。

特に重要なのが使用方法の明記です。日本国内では説明不要の前提——お茶の適温、クレンジングオイルを使う順序、乾物の戻し時間——が、海外では存在しません。一回目の使用で失敗すると、二回目は購入されません。

始め方の順序

  1. 既存サイトのアクセス解析で流入国を確認し、一か国に絞る
  2. その国の規制要件を確認し、対応費用と期間を見積もる
  3. 送料を試算し、DDPで成立する価格を決める
  4. その価格で買われるかを、現地の生活者に確認する
  5. 英語ページを作り、使用方法を明記する
  6. 小さく始めて、返品理由とカート離脱地点を計測する

4番を飛ばす企業様が非常に多いのですが、ここが最も安く、最も判断を変える工程です。

価格とページを、出す前に検証する

英国の生活者に、商品ページの英文と想定価格を提示して反応を確認する調査を承っています。画像とテキストのデータだけで実施でき、現物の発送も渡航も不要です。複数案のA/B比較も可能です。

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よくある質問

この記事に関して実際によくいただく質問です。

越境ECはどの国から始めるべきですか?

既存サイトへの海外からの流入が最も多い国から始めるのが最も確実です。次点は規制のハードルが低く、送料が成立する国です。雑貨やアパレルであれば選択肢は広く、化粧品や食品の場合は規制対応の難易度が国選びを大きく左右します。いずれにせよ、まず一か国に絞ることを推奨します。

越境ECの送料はどう設定すればよいですか?

関税込みで販売するDDP方式を推奨します。購入者が受け取り時に想定外の請求を受けるDDU方式は、受け取り拒否率が高く返送費用も発生します。欧米の消費者は合計金額が最後まで分からないことを強く嫌うため、DDPが難しい場合でも決済前に総額を明示してください。

化粧品を越境ECで販売するには何が必要ですか?

EU向けにはCPNP登録と域内の責任者(Responsible Person)の指定、英国向けには別途SCPNへの登録が必要です。個人輸入代行と、事業者としての販売では適用される規制がまったく異なります。対応の費用と期間は事前に見積もり、商品ページの制作より先に着手してください。

日本語の商品説明をそのまま英訳すれば売れますか?

売れるとは限りません。翻訳の正確さと、現地の生活者に伝わるかは別の問題です。特に見落とされやすいのが使用方法の明記で、日本国内では説明不要の前提が海外には存在しません。一回目の使用で失敗した商品は二回目が購入されないため、温度・分量・順序の明示が再購入率に直結します。

越境ECを始める前に市場調査は必要ですか?

市場規模の調査は必須ではありませんが、想定価格とパッケージが現地で通用するかの確認は、出す前に行う価値が非常に高い工程です。画像データだけで実施できるため費用も期間も小さく、問題が見つかった場合にまだ修正できる段階にあることが最大の利点です。