海外販路開拓の手順 — 販路を探す前に決めるべきこと
海外販路開拓の相談は、たいてい「どこに売り込めばいいか」から始まります。しかし販路は目的ではなく手段です。誰に、いくらで、どういう理由で買ってもらうのかが決まっていないまま販路を探すと、条件の悪い相手と組むか、価格で押し切られるかのどちらかになります。順序を整理します。
販路は四種類
| チャネル | 向いている場合 | 主な難点 |
|---|---|---|
| 越境EC(直販) | 単価が中〜高、軽量、規制が緩いカテゴリー。小さく始めたい | 集客を自力で行う必要がある。物流と関税の設計が必須 |
| 現地ECモール Amazon、Etsy など |
すでに需要が存在するカテゴリー。集客を借りたい | 手数料と価格競争。ブランドが育ちにくい |
| 代理店・輸入業者 | 実店舗の棚を取りたい。規制対応を任せたい | マージンの積み上げ。独占権の交渉。顧客が見えなくなる |
| OEM・素材供給 | 製造力が強く、ブランドにこだわらない場合 | 価格交渉力が弱い。相手都合で切られるリスク |
多くの企業様は「代理店を探す」から始めますが、実績のない状態で代理店と交渉すると条件が悪くなります。小さくてもECで販売実績を作ってから交渉に入るほうが、結果的に良い条件で組めます。
販路を探す前に決める三つのこと
一.国を一つに絞る
「欧州向け」では設計できません。規制も、決済手段も、価格感覚も、購買習慣も国ごとに違います。既存サイトへの海外流入が多い国、規制のハードルが低い国、送料が成立する国。この三点で一か国に絞ってください。
二.現地小売価格を先に決める
日本の出荷価格から積み上げるのではなく、現地の棚でいくらに見えるべきかから逆算します。輸送費、関税、代理店マージン、小売マージンを差し引いて、出荷価格が成立するかを確認する。成立しないなら、そもそもその販路は使えません。
この計算を後回しにすると、交渉が進んでから「その価格では扱えない」と言われ、値下げ以外の選択肢がなくなります。
三.その価格で選ばれる根拠を持つ
最も曖昧なまま進みがちな項目です。現地の棚で競合がいくらで売られているか、その中で自社商品が選ばれる理由が消費者に伝わるか。
日本製品が英国の棚で競合の1.5〜2倍になることは珍しくありません。価格が高いこと自体は問題になりません。高い理由が読み取れないことが問題になります。産地、製法、原料、認証——いずれか一つでも短く提示されていれば、価格は「高い」から「高級」に変わります。
小さく検証してから広げる
実務的に最も無理がない順序は次のとおりです。
- 一か国に絞る(アクセス解析と規制で判断)
- 価格とパッケージを現地の生活者に検証する(画像データのみで実施可能。最も安く、最も判断が変わる工程)
- 越境ECまたはクラウドファンディングで小さく販売する(実需の確認と、返品理由の収集)
- その実績を持って展示会に出る/代理店と交渉する
- 棚を取ってから、隣国に広げる
2番を飛ばして4番に進む企業様が非常に多いのですが、そこで得られるはずだった情報は、代理店との交渉が始まってからでは手に入りません。
計測しておくべき三つの数字
販路を開いたあと、次の三つを追ってください。いずれも次の打ち手を直接示します。
- カート離脱地点 — 送料表示で落ちているのか、決済手段で落ちているのか
- 返品理由 — サイズか、期待との差か、使い方の失敗か。三番目が多い場合、商品ではなく説明の問題です
- リピート率 — 初回購入が伸びてもリピートが立たない場合、商品体験に問題があります。ここは広告費で解決できません
英国の生活者に商品・パッケージ・想定価格を提示し、その価格で選ばれるか、選ばれないとすれば何が理由かを確認する調査を承っています。画像データのみでの実施も可能で、渡航は不要、レポートは日本語です。
よくある質問
この記事に関して実際によくいただく質問です。
海外販路開拓はどのチャネルから始めるべきですか?
実績がない段階では越境ECかクラウドファンディングから始めることを推奨します。実績のない状態で代理店と交渉すると条件が悪くなるためです。小さくても現地での販売実績を作ってから展示会や代理店交渉に進むほうが、結果的に良い条件で組めます。
海外向けの価格はどう決めればよいですか?
日本の出荷価格から積み上げるのではなく、現地の棚でいくらに見えるべきかから逆算してください。そこから輸送費、関税、代理店マージン、小売マージンを差し引いて出荷価格が成立するかを確認します。成立しないなら、そのチャネルはそもそも使えません。
日本製品が海外で高くなるのは問題になりますか?
価格が高いこと自体は問題になりません。高い理由が消費者に読み取れないことが問題になります。産地、製法、原料の希少性、職人の関与、認証のいずれか一つでもパッケージ上に短く示されていれば、価格の受け取られ方が高いから高級へと変わります。
販路開拓の前に市場調査は必要ですか?
市場規模の調査より、自社商品の価格とパッケージが現地で通用するかの検証のほうが優先度が高くなります。画像データのみで実施でき費用も期間も小さく、問題が見つかった時点でまだ修正できる段階にあることが最大の利点です。代理店交渉が始まってからでは得られない情報です。
販路を開いたあと何を計測すべきですか?
カート離脱地点、返品理由、リピート率の三つです。離脱地点は送料表示か決済手段のどちらで落ちているかを示し、返品理由が使い方の失敗に集中している場合は商品ではなく説明の問題です。初回購入が伸びてもリピートが立たない場合、広告費では解決できません。