海外市場調査を依頼する前に決めておくべき四つのこと
海外市場調査で最も多い失敗は、調査の質ではなく発注時の設計にあります。「欧州市場について調べてほしい」という依頼は、受ける側からするとほぼ何も決まっていない状態です。結果として、読めば分かる統計をまとめた分厚い資料が納品され、意思決定は一歩も進みません。依頼前に決めておくべきことは、実は四つだけです。
一.何が分かれば、次の判断ができるのか
最初に決めるべきは調査項目ではなく、「この調査の結果によって、社内の何が決まるのか」です。
「進出するかどうかを決める」のか、「進出は決まっていて、どの価格帯に置くかを決める」のか、「商品は決まっていて、パッケージを直すかどうかを決める」のか。この三つでは、必要な調査がまったく違います。判断内容が決まっていないまま発注すると、あらゆる項目を薄く網羅した資料が出来上がり、どの項目も判断には足りません。
逆に言えば、判断内容さえ明確なら調査は小さくできます。「このパッケージ案A・Bのどちらが英国の30代女性に伝わるか」だけを知りたいなら、数十万円規模で十分な精度が出ます。
二.デスクリサーチで足りるのか、一次調査が要るのか
この切り分けを間違えると、費用が一桁変わります。
| 種類 | 分かること | 分からないこと |
|---|---|---|
| デスクリサーチ 既存統計・業界レポート・競合サイトの分析 |
市場規模、成長率、主要プレイヤー、規制の概要、価格帯の相場 | 自社商品への反応。ここは一切分かりません |
| 一次調査 実際の生活者に聞く・試してもらう |
購入意向、価格の妥当性、パッケージの伝わり方、使用後の評価、離脱理由 | 市場全体の規模。サンプルは市場の縮図ではありません |
両方必要な場合もありますが、「市場規模は既に分かっているのに、なぜか自社商品の反応だけ分からない」という状態の企業様が非常に多いのが実情です。その場合、必要なのは一次調査だけです。
三.対象者の条件をどこまで絞るか
条件を厳しくするほど、募集期間と謝礼が上がります。「英国在住・35〜44歳・世帯年収上位20%・過去1年に日本食品購入経験あり・アレルギーなし」まで絞ると、募集だけで数週間かかります。
実務的な助言として、多くの調査では「日本に詳しくない一般消費者」のほうが有益です。日本好きの層は既に好意的なバイアスがあり、彼らの評価は一般市場での受容性を過大に見積もらせます。棚の前を通り過ぎる普通の消費者がどう反応するかのほうが、進出判断には効きます。
四.結果が悪かったときにどうするか
これを事前に決めていない調査は、結果が悪いと社内で棚上げされます。「悪い結果が出たら中止する」「悪い結果が出たらパッケージを直して再調査する」——どちらでも構いませんが、決めておくことに意味があります。
調査の価値は、進出前に悪い結果が判明することにあります。進出後に判明した場合の損失と比較すれば、調査費用は桁が二つ違います。
費用はどう決まるか
調査会社の見積りは、おおむね次の要素で決まります。
- 調査形式 — 画像だけのオンライン評価が最も安く、現物発送を伴う複数週のホームユーステストが最も高くなります
- サンプル数 — 定性なら6〜30名、定量なら100名以上が目安
- 対象者条件の厳しさ — 絞るほど募集費が上がります
- 実費 — 対象者謝礼、商品の国際発送費、会場費、通訳費
- レポートの深さ — 集計のみか、考察と提言まで含むか
見積りを比較する際は、実費が含まれているかを必ず確認してください。調査費用だけ安く、謝礼と発送費が後から積み上がる見積りは珍しくありません。
渡航せずに進められるか
進められます。商品を現地に送っていただければ、対象者の募集、発送、テスト実施、集計まで現地側で完結します。座談会はオンラインでご視察いただけますし、同時通訳を手配すればその場で質問を追加していただくことも可能です。渡航費と日程調整が不要になるぶん、判断の速度が上がります。
当サイトは、日本の商品を英国をはじめとする欧米の生活者に実際に試していただき、生の反応を日本語レポートにしてお届けしています。渡航は不要です。集計値だけでなく、参加者が実際に発した言葉を英語原文と日本語訳の両方で収録します。
よくある質問
この記事に関して実際によくいただく質問です。
海外市場調査の費用はどのくらいかかりますか?
調査形式、サンプル数、対象者条件の厳しさによって大きく変わります。画像データのみで実施するコンセプト評価が最も安価で、現物発送を伴う複数週のホームユーステストや座談会を組み合わせる場合は相応の規模になります。見積りを比較する際は、対象者謝礼・国際発送費・会場費などの実費が含まれているかを必ず確認してください。
渡航せずに海外市場調査はできますか?
できます。商品を現地に送れば、対象者の募集、発送、テスト実施、集計まで現地側で完結します。座談会はオンラインで視察でき、同時通訳を手配すればその場で質問を追加することも可能です。渡航費と日程調整が不要になるため、判断までの時間も短くなります。
デスクリサーチと一次調査はどちらが必要ですか?
知りたいことによります。市場規模、成長率、主要プレイヤー、規制の概要を知りたいならデスクリサーチで足ります。自社商品が実際にどう受け取られるか、いくらなら買われるか、パッケージが伝わるかを知りたい場合は、デスクリサーチでは一切分かりません。一次調査が必要です。
調査対象者は日本に詳しい人のほうがよいですか?
多くの場合、逆です。日本に好意的な層は既にバイアスがあり、一般市場での受容性を過大に見積もらせます。棚の前を通り過ぎる普通の消費者がどう反応するかのほうが、進出判断には有効です。日本製品に馴染みのある層を狙う商品の場合のみ、条件として指定する意味があります。
調査結果が悪かった場合はどうなりますか?
そのまま報告されるべきです。悪い結果は、進出前に判明したという意味で最も価値のある結果です。進出後に同じことが判明した場合の損失と比べれば、調査費用は桁が二つ違います。発注前に「悪い結果が出たらどうするか」を社内で決めておくと、結果が棚上げされずに済みます。