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日本酒の輸出 — 英国・欧州で最初に確認すべきこと

日本酒の輸出額は長く伸びてきましたが、欧州市場は北米やアジアとは事情が違います。飲む文脈が確立していないのです。品質は評価されるのに、いつ何と一緒に飲むものなのかが分からない。この一点が、実務上の手続き以上に売れ行きを左右します。手続きと合わせて整理します。

手続きの全体像

酒類の輸出は、日本側と現地側の両方で要件があります。

日本側:酒類の輸出には輸出酒類卸売業免許が関係します。自社で輸出するのか、免許を持つ商社を通すのかで必要な手続きが変わります。また日本酒については地理的表示(GI)の制度があり、「日本酒」の表示を使う条件が定められています。

現地側:輸入者側での酒類の取り扱い登録、酒税(Excise Duty)の納付、付加価値税、そしてラベル要件。英国とEUではEU離脱以降、要件が別立てになっている点に注意が必要です。

制度は改定されるため、実務にあたっては国税庁、JETRO、および現地の税関当局の最新情報を必ずご確認ください。

ラベルで見落とされやすい項目

実務上、輸入業者から差し戻される主な理由は次のとおりです。

  • アレルゲン表示 — 日本酒は原料が限られますが、表示義務の形式が現地基準である必要があります
  • 亜硫酸塩の表示 — 一定濃度以上で表示義務が生じます
  • アルコール度数と内容量の表記形式 — 現地の書式に従う必要があります
  • 輸入業者名と所在地 — 現地の事業者名の記載が必要です
  • ロット番号 — トレーサビリティのため

これらは通常、現地の輸入業者が対応します。裏ラベルを現地で貼り替える前提で設計しておくと進行が早くなります。

輸入業者をどう探すか

欧州では、酒類は原則として現地の免許を持つ輸入業者を通します。探し方は主に三つです。

  • 展示会 — 欧州の酒類・食品見本市。輸入業者が明確な目的を持って来場するため効率が高い
  • 公的機関 — JETROの商談会や、酒類の輸出促進事業
  • 既存の日本食品輸入業者 — すでに日本の食材を扱っている業者は、酒類も扱っているか、扱える可能性があります

輸入業者を選ぶ際は、取扱銘柄数と販売先の種類を確認してください。銘柄を多く抱える業者は、自社が埋もれる可能性があります。飲食店向けなのか小売向けなのかで、必要な価格設計もまったく変わります。

実務より難しい問題:飲む文脈がない

ここが欧州市場の核心です。英国の消費者調査で日本酒を扱うと、繰り返し次の反応が出ます。

  • 「温めて飲むものだと思っていた」 — 熱燗のイメージが強く、冷酒の存在が知られていません
  • 「強い酒だと思っていた」 — 蒸留酒と混同されており、実際の度数(15%前後)はワインに近いと知ると反応が変わります
  • 「日本食と一緒にしか飲めないと思っていた」 — これが最大の制約です。日本食レストラン以外での消費が想定されていません
  • 「どれを選べばいいか分からない」 — 純米、吟醸、大吟醸の違いが伝わっていません

実務的な示唆は明確です。ラベルとPOPで、温度・度数・合わせる料理を明示すること。「Serve chilled. 15% ABV. Pairs with seafood, cheese and roast chicken」という一行があるかないかで、購入率が変わります。

特に日本食以外との組み合わせを提示することの効果が大きく出ます。チーズ、生牡蠣、ローストチキンといった現地の日常的な食事との相性を示すと、消費機会が日本食レストランの外に広がります。

価格設計の考え方

輸送費、酒税、輸入業者マージン、小売マージンが積み上がり、現地小売価格は日本の出荷価格の数倍になります。この価格帯では、ワインの中〜上位価格帯と直接比較されます。

したがって、その価格に見合う理由が棚の上で読み取れる必要があります。精米歩合、地域、蔵の歴史、製法。いずれか一つでも短く提示されていれば、価格は「高い」から「高級」に変わります。何も書かれていない瓶は、単に高いだけの見慣れない酒になります。

英国の消費者に、実際に飲んでもらう

英国の生活者に日本酒を実際に試していただき、温度・料理との組み合わせ・価格の妥当性への反応を収集する調査を承っています。ラベルとPOPの英文検証も可能です。渡航は不要、レポートは日本語です。

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よくある質問

この記事に関して実際によくいただく質問です。

日本酒を輸出するには何の免許が必要ですか?

日本側では輸出酒類卸売業免許が関係し、自社で輸出するか免許を持つ商社を通すかで手続きが変わります。現地側では輸入業者による酒類取扱の登録と酒税の納付が必要です。制度は改定されるため、国税庁とJETRO、および現地税関当局の最新情報を必ず確認してください。

英国とEUで日本酒の輸出要件は同じですか?

異なります。英国のEU離脱以降、酒税、付加価値税、ラベル要件はそれぞれ別立てになっています。英国とEU双方に輸出する場合は、二つの制度に対応する必要があると考えてください。実務は現地の輸入業者が担うことが一般的です。

欧州で日本酒が売れにくい理由は何ですか?

品質ではなく、飲む文脈が確立していないことが最大の要因です。英国の消費者調査では、熱燗のイメージが強く冷酒が知られていない、蒸留酒と混同され度数が高いと思われている、日本食以外と合わせられると思われていない、という反応が繰り返し出ます。

日本酒のラベルには何を書くべきですか?

温度、アルコール度数、合わせる料理の三点を英語で明示することが最も効果的です。特に日本食以外との組み合わせ、たとえばチーズや生牡蠣、ローストチキンとの相性を示すと、消費機会が日本食レストランの外に広がります。

欧州で日本酒の輸入業者はどう探せばよいですか?

欧州の酒類・食品見本市が最も効率的です。輸入業者が明確な目的を持って来場するためです。JETROの商談会や、すでに日本の食材を扱っている輸入業者へのアプローチも有効です。選定時は取扱銘柄数と販売先の種類を確認してください。銘柄を多く抱える業者では自社が埋もれる可能性があります。